シンキロウの大人の化学

シンキロウによる化学雑記。普段化学に親しみのない方に身近にある化学から高尚な化学まで偏見を交えて伝えたい

電子レンジを化学する

最近は化学反応にも電子レンジが使われることがある。ところで電子レンジでなぜものは温まるのだろう?今日は電子レンジを化学する


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電子レンジ = マイクロ波発生器

電子レンジに入れてチンするとお弁当は一分くらいで温かくなる。これをお湯やガスでやろうとすると時間がかかるし、下手したら焦げてしまう。そういえば電子レンジは中が熱くなったりしない。じゃあいったい何で温めているのだろう?答えはマイクロ波マイクロ波は電磁波、簡単に言うと電波の一種なんだ。電波は波のようなもので、1秒間に波打つ回数 (周波数) によって性質が大きく変わる。例えばFMラジオは超短波と呼ばれる約 80 メガヘルツ (ヘルツは周波数の単位でメガヘルツは百万ヘルツのこと)の電磁波を使っている。一方で電子レンジのマイクロ波は 2400 メガヘルツでずっと大きな周波数なんだ。マイクロ波はものを温めることもできるけど、携帯電話の通信にも使われている。2400 メガヘルツは別の呼び方で 2.4 ギガヘルツと呼ばれているよ

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マイクロ波は分子を回転させる

マイクロ波を物質に当てると、マイクロ波のエネルギーが分子の熱エネルギーに変換される。熱エネルギーは化学・物理的には分子の運動なんだ。分子が勢いよく動き回っているときは温度が高く、動きが遅いときは温度が低い。分子の運動には並進、回転、振動の三種類があって、よく電子レンジは水分子を振動させて温めると説明されることがあるけど、実はあまり正しい表現ではない。マイクロ波で起こすことができるのは回転運動。下の図の青い矢印がこれに当たる。振動は下の図の赤い矢印のような運動で、振動を起こすには赤外線エネルギーがいるんだ。実は赤外線も電磁波の一種。もっというと光は電磁波なんだ。そのエネルギーはマイクロ波なんかよりずっと大きい。水は赤外線を吸収するから温室効果に聞いていることは前に話したね (水を化学する)。そのエネルギーをマイクロ波のエネルギーと比べてみると4万倍以上大きいんだ。


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最近は化学反応にも電子レンジ、つまりマイクロ波を使うことがある。熱をかけるだけでは起こらないような化学反応もできる。大学の研究室だけじゃなく産業利用もされているんだ。化学は日夜進歩しているんだ


そういえば最近チンていう電子レンジ見なくなったなあ