シンキロウの大人の化学

シンキロウによる化学雑記。普段化学に親しみのない方に身近にある化学から高尚な化学まで偏見を交えて伝えたい

思ったとおりにはいかない工場の化学

今年の梅雨はたくさんの水を大地にもたらしたが、そろそろ終わりに近づいてきた。南方の高気圧に由来するムワッとした空気を感じるようになってきた

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はじめのころは 3 日に 1 本は記事を書くつもりだったんだけど、このところ忙しくて手がつかなかった。シンキロウは化学メーカーに勤めてるんだけど、この数カ月は研究室を出て工場に行っていたんだ

 

化学というとフラスコ持った博士と助手がドカーン (※) とやってチリチリ頭で口からケムリを吐くのを想像するだろう。たしかにあれも化学だ。でもそれはあくまで研究室レベルの話。身の回りにあふれている化学製品。あれだけの量を作ろうと思うとフラスコなんかじゃとても間に合わない。だから化学メーカーではフラスコの何千倍、何万倍の大きさの反応釜で合成するんだ

(※) マンガではかんたんに爆発させるけど、実際の爆発の威力はあんなものじゃない。それに爆発なんかあったら労基案件だ

 

開発の最初のころは研究室で1リットルくらいのフラスコで反応を試してうまく化合物ができるかを確認する。そこから量を大きくしていくんだけど、料理と一緒で簡単にはいかない。加熱や冷却のムラ、撹拌の効率、ろ過の早さ…いろんなところを見ないといけない。反応が遅かったりするとその分時間が掛かって人件費に返ってくる。反対に反応が速すぎて暴走すると大惨事につながる。だから研究室でちゃんと観察しておかないといけない。それがシンキロウの普段の仕事

 

今回は研究室でうまく行ったものを製品として世に送り出すために工場で製造してきた。スケールは研究室の1万倍。500リットルの反応釜を動かしてきた。すんなり行くかと思いきや、出るわ出るわ問題の山!薬剤を入れていくと急激に温度が上がったり、ろ過にすごく時間がかかったり、溶媒の蒸気で頭クラクラしたり。終わったら次の製品の製造に反応釜を明け渡すんだけど、いつまで洗っても色が落ちなかったり・・・

 

実はシンキロウにとって今回が工場デビューだったんだ。実験室ではわからなかったことがたくさんあった。これからも開発は続いていく。がんばって自分のつくった新しい化学製品を世の中に送り出していきたいと心新たにした7月だった