シンキロウの大人の化学

シンキロウによる化学雑記。普段化学に親しみのない方に身近にある化学から高尚な化学まで偏見を交えて伝えたい

元素の話 ① 錬金術が見つけた元素

ひとつの捉え方として化学は元素のサイエンスといえる。というわけで今日は元素のはなし


元素と錬金術

物質をどんどん分解していってそれ以上は分けることができないものを元素というんだ。英語ではエレメント (element)。2020年3月現在までに水素からオガネソンまで 118 個の現祖が見つかっているんだ

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これ以上分解できないものとして原子というものもある。これは元素とほぼ同じような意味合いで使われることが多いんだけど、原子ははっきりとした粒を指すのに対して、元素はぼんやりした概念を指すことが多いんだ。水の構成を例にとると

  • 水分子は2個の水素原子と1個の酸素原子からできている
  • 水は水素と酸素の2種類の元素からできている

という感じかな?

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この世界の物質はすべて元素から構成されている。物質をあつかう化学は元素の上に立つサイエンスなんだ。そして化学は元素の探求から発展してきたといえる


物質の根源である元素の探求は洋の東西を問わずはるか昔から行われてきた。西洋ではすべてのものは地水火風の四大 (しだい) と呼ばれるものからできていると考えられた。似たようなもので中国では木火土金水というものが考えられた。これは曜日や惑星の名前に残っているね。でも地水火風木火も土金水も元素というよりどちらかというと性質を表しているかな。


今で言う元素に近いものは今から 2500 年ほど前に栄えた古代ギリシャ文明で考えられ始めたんだ。
ターレスはすべての源は水と考えた。その後空気を元素と考える哲学者が現れたけど、デモクリトスという人至ってはじめて原子 (アトモス) の存在が提唱されたんだ。アトモスはこれ以上分けることができないものっていう意味で、英語で原子を意味するアトムのもとになったんだ。でもその時点では現在のようなたくさんの種類の原子つまり元素の存在まではわからなかった。その後長い年月の間に忘れられていった


その後、西洋では金 (ゴールド) を作る研究である錬金術が発展し、中国では不老不死の薬を作る煉丹術が行われた。両方とも鋼の錬金術師に出てくるから名前を聞いた人は多いと思う。実はシンキロウもファンなんだ。でも実際には錬成陣を使ったりするんじゃなくて今の化学実験みたいなことをしてたんだ。長い年月に渡る錬金術師の努力でいろんなものが生み出されてきた。例えば中世のアラビアではアルコールが蒸留によって分離されたし、中国では火薬が発明された。今でも使われている化学実験器具も錬金術師が作ってきたものに端を発するんだ。


でも結局誰も金や不老不死の薬は作れなかった。不老不死の薬は遺伝子工学が発展すれば作れるかもしれないけど、金は錬金術では決して作ることはできない。それはね、金は元素だからなんだ。化学は元素をもとにしている。ということはもとになっている元素を作ったり壊したりすることはできないんだ。それが明らかになったとき錬金術は化学になったんだ


金を作るという意味では錬金術は成功しなかった。でもなぜ金を作ろうと思ったのかを考えると見方は変わってくる。身の回りを見渡してみるといろんな化学製品に囲まれている。金属、プラスチック、化学繊維、食品、お薬…その数は数え切れない。どれも金ほどの価値はない。でも金なんかより生活を豊かにしてくれるから金よりもずっと価値があるとも考えられないかな。そういった意味では錬金術は成功したとも言えるのかもしれない。もしかしたら化学は現在でも錬金術でありつづけているのかもしれない