シンキロウの大人の化学

シンキロウによる化学雑記。普段化学に親しみのない方に身近にある化学から高尚な化学まで偏見を交えて伝えたい

元素の話③ 元素の誕生、金は少ない

元素の話の最終回。最後は元素はどうやってできたのかそしてどれだけあるのかについて

 

元素の誕生

 

宇宙ができたときは水素ばかりだったらしい。水素原子は陽子というプラスの電荷を持つ粒一個でできた原子核とマイナスの電荷を持つ電子一個からできている一番小さな原子なんだ。電荷というのは電気の量と考えてもらえればいいかな。ちなみに原子は原子核のプラスの電荷とまわりにある電子のマイナスの電荷が釣り合った状態なんだ

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話を戻す。宇宙空間で水素は万有引力 (重力) によって集まって大きなかたまりになり、強い圧力で水素は原子核融合反応をおこし輝き始めた ― 星の誕生だ。星は核融合により莫大なエネルギーを放出する。ちょうど太陽のように


この星の輝きの裏で新しい元素が誕生し始めていた。水素の次に重い元素ヘリウムだ。そうやって星の中では水素がどんどんヘリウムになっていったんだ。

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でもそんな星にもいつかは寿命がやってくる。大きな星は最後に大爆発を起こして超新星となって寿命を終える。でも元素誕生の歩みは終わらなかった。爆発のすさまじいエネルギーでさらに重い元素が生み出されていったんだ。やがて宇宙に散らばった元素たちはまた集まり始めて星になっていった。星の誕生と終焉を何度も繰り返してどんどん重い元素が作られていったんだ。地球はいくたびもの星の誕生と終焉を経てできたんだろう。そして私たちの体も


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地球の元素

宇宙には水素とヘリウムがたくさんある。惑星のような硬い元素からできた星もあるけど、多くは太陽のような恒星やガスなんだ (注)。じゃあ地球上ではどうだろう?空気は窒素分子 N2 78%、酸素分子 21%、ネオンNe 1% から構成されているので元素としては窒素、酸素、ネオンの順だ。海はほとんどが水なので水素と酸素が主な元素だ。大地は地表から数十キロの間までの地殻という部分は岩でできている。岩を作る元素は多い方から酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄の順で存在していると言われている。これはクラーク数と呼ばれている。さらに地球の内部は鉄やニッケルなどの重い元素が主体と考えられている
(注) ダーク・マターと呼ばれるものもある


さっきヘリウムは宇宙にはたくさんがあるといったけど地球上にはあまりないんだ。名前もギリシャ語で太陽を意味するヘリオスに由来して、もともとは太陽にある元素だと考えられていたんだ。でもアメリカとカタールでわずかながら産出している。ヘリウムにはいろんな用途があるけど、冷却剤として重要なんだ。冷やすといっても氷やドライアイス (-78 ℃) よりずっと低い −269 ℃!絶対温度でいうと 4 ケルビン科学研究に必要不可欠なものなんだ。でもヘリウムは最近世界的に供給が不安定になっていて価格が高騰しているんだ。だから高い声を出すために使うのは感心しないね


元素の話①錬金術について話したけど、原子番号 79 番の金は昔から高価な金属だった。きれいな黄色 (もちろん金属光沢がある)で、錆びなくて、あまり存在しないことが理由だ。多くの金属は空気にさらされると錆びてしまうんだけど、金やプラチナのような貴金属は錆びにくいんだ。それに地球上に存在する量も本当に少ない。人類の歴史が始まってから掘り出された総量は国際基準プールに4杯分しか存在しないんだ (→田中貴金属)

これは重い元素全般にいえることで、超新星爆発を経ないとできないことからもわかるね。

 

最近発見されている元素は自然には存在しないものが多くて、そのほとんどは加速器と言われる大きな設備で作られている。前に化学では元素は作れないと言ったけど、これは化学じゃくなくて原子核物理学なんだ。でもその気になれば錬金術では不可能だった金を作ることもできる。ただ量があまりにも少ないので採算は取れないけどね