【時事】亜鉛二次電池のはなし
シンキロウは博士研究員のころ二次電池の研究もしていたんだ。そこで最近目に留まった新聞記事から
日本触媒 新亜鉛2次電池を考案 充放電優れ長寿命 (2020/2/19 化学工業日報)
要約すると
- 亜鉛二次電池用セパレーターの用途開拓を進める
- 充電時に亜鉛から生成するデンドライトを貫通させないため、ニッケル亜鉛電池など負極材料に亜鉛を用いる蓄電池の実現に寄与
- 同じセパレーターを使ったカーボン亜鉛ハイブリッド電池の研究開発に乗り出した
記事タイトルの亜鉛二次電池は 2 と 3 で書かれているようにニッケル亜鉛電池とカーボン亜鉛ハイブリッド電池のことを指しているんだろう
亜鉛二次電池とは?
二次電池ってなに?
亜鉛二次電池の説明をする前にまず二次電池についてはかんたんに説明しておこう。二次電池とは充電して繰り返し使える電池のことでバッテリーとも呼ばれる。2019年にノーベル賞で有名になった吉野 彰博士が発明したリチウムイオン電池やかつてミニ四駆に使ったニッケルカドミウム電池などがこれに当たる
一方、普段よく使っているテレビのリモコンや懐中電灯の中に入っているマンガン電池やアルカリ電池は一次電池という。二次電池との違いはこれは充電できないこと。充電しようと思えばできないこともないけど破裂したりして危ないので一次電池の充電は絶対やめてほしい
ニッケル亜鉛電池
電池を使うときは、負極 (➖極) で亜鉛 (Zn) が電子 e- を出して亜鉛イオン (Zn2+) になり、電子は回路を通って正極 (➕極) でニッケル (Ni) 化合物にわたされる。このときニッケル化合物に含まれているニッケル原子は 3 価から 2 価に還元される。
反対に電池を充電する使うときは、➕極のニッケル化合物から電子を奪い取って➖極の亜鉛イオンに与えて亜鉛に戻す。こうしてもとの状態にもどる
カーボン亜鉛ハイブリッド電池
つぎにカーボン亜鉛ハイブリッド電池の話だ。名前のとおりカーボンつまり炭素と亜鉛を使った電池。ニッケル亜鉛電池の構造から推測すると
➕極 = カーボン
➖極 = 亜鉛
なんだろうけど、ふつうこの組み合わせでは電池にならないので
➕極 = 亜鉛
➖極 = カーボン
じゃないかと思う。記事全文は読めなかったんだ…
電池を充電するときに➕極で亜鉛が電子を放出して亜鉛イオンになるんだけど、➖極で反応するものがない。たぶんリチウムイオン電池と同じで➖極でカーボンが電子を受け取っているんだろうと思う。そうすると➖極は電子の負電荷でいっぱいになるので亜鉛イオンが電池の中をプラス極のカーボンに移動して電荷の釣り合いをとるんだろう。これもリチウムイオン電池とよく似ている。ただしリチウムイオン電池はリチウムイオンが層状カーボンの間に入っていくところが技術なんだ。亜鉛イオンでは大きすぎてはいらないんじゃないか?だとしたらそこに「ハイブリッド」と呼ばれる技術があるのかもしれない
セパレーター
電池の内部で➕極と➖極の物質がくっついてショートしてしまわないように入れる膜。内部に満たされている電解液とイオンは通りさらに耐久性も兼ね備えている必要がある
放電するときに亜鉛が元のようにキレイに➕極の上に付着してくれればいいんだけど、そうは問屋が下ろさない。これはリチウムイオン電池でも問題になっていたんだけど、溶けていたリチウムイオンが電子を受け取ってリチウム金属に戻るときに木の枝のような形になることがあるんだ。これをギリシャ語で木を意味するδενδρον (デンドロン) からデンドライトという。この木の枝がニョキニョキ伸びて➕極まで達すると電池がショートして下手したら破裂してしまうんだ。これを防ぐのもセパレータの大切な役目なのである。
デンドライトはリチウムイオン電池でも問題だったけど技術が発達してすっかり克服されているみたいである