水アカ落しを化学する
ポットの中、おふろの鏡、キッチンのシンク・・・どれも放っておくと水アカだらけになってしまう。だから水アカ落としをするんだけど、あれはいったいどう効いているんだろう?そういうわけで今日は水アカ落としを化学する
水アカの正体はミネラル
水アカの正体はミネラルつまり金属イオンの化合物なんだ。水に溶け込んでいる主な金属はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのイオンだろう。これらに相方となる陰イオンが存在している。代表的な陰イオンは塩化物イオンや炭酸イオン、炭酸水素イオンかな。こいつらが水の中をフラフラとしてるんだけど、カルシウムやマグネシウ厶と炭酸水素イオンのペアはわりと水に溶けにくいので沈んでくるんだ。これが水アカの正体だ
水アカは酸で溶かす
水アカは酸で溶かせる。さっき言った炭酸水素イオンは炭酸の仲間なんだ。炭酸は知ってのとおりビールやサワー (ここでコーラを出さないのが大人の化学だ) のシュワシュワ。実はこれ二酸化炭素 CO2の別名なんだ。二酸化炭素は水に溶けると水分子とくっついて炭酸になるんだ。水素イオンが抜けやすいから弱い酸性を示す
酢酸という酸がある。お酢に含まれている酸っぱい成分だ。これは炭酸に比べてずっと強い酸だ。なので、水アカに酢酸を反応させると炭酸水素イオンと酢酸が置き換わってしまう。専門的には弱酸遊離という。置き換えられた炭酸水素イオンは二酸化炭素になって飛んでいってしまう
残った酢酸とカルシウムイオンやマグネシウムイオンの化合物カルボン酸塩は水に溶けやすいので水アカは落ちるんだ。さらに強い塩酸を使えばもっと早く溶かせるんだけど、ステンレス容器なんかだと錆びやすくなってしまうんだ。シンキロウも大学で研究していたときにやらかしたことがあるよ・・・ステンレスは酸や塩化物イオンに弱いからね
クエン酸の秘密ワザ「キレート」
水アカを落としには酢酸よりもクエン酸がよく使われる。クエン酸は果物にたくさん含まれている有機化合物でレモンの酸っぱさの素だ。
クエン酸は酢酸みたいに臭くないうえにキレート効果でカルシウムイオンやマグネシウムイオンを溶かしやすくする働きがあるんだ。もともとギリシャ語でカニのハサミを意味する言葉から来てるんだ。その名の通り2箇所以上の点でハサミのようにイオンをガッチリと挟み込んで溶かしてしまう
他にキレートを応用した技術として、電子回路の洗浄液がある。電子回路はプラスチックの板に貼りつけた薄い銅箔をエッチングして作るんだけど、このとき残った銅イオンを洗い流さないと回路がショートしてしまう。そこでクエン酸で銅イオンをガッチリとキレートして洗い流しているんだ。精密な電子回路を作るには他の金属イオンが入っていてはいけないのですごく純度の高いものが使われているんだよ