シンキロウの大人の化学

シンキロウによる化学雑記。普段化学に親しみのない方に身近にある化学から高尚な化学まで偏見を交えて伝えたい

エネルギー管理も化学のお仕事

シンキロウは40歳にしてポスドクを辞めて中小化学メーカーに入社した。開発業務がメインだけど他にもいろんな業務に携わっている。海外営業に同行したりやったことのないゴルフで接待したり。どれも大学で働いていたときには経験できなかったので新鮮だ。今回は化学の実務としてエネルギー管理業務があるについて話そう

 

エネルギー管理とは

国が定めたエネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づいて一定規模のエネルギーを使う会社が行う業務のこと。簡単に言うと省エネ。詳細な業務内容はネットに詳しく書かれているからここでは省くけど、いくつか面白い点があるので紹介する

 

エネルギー使用の平準化

省エネというのはこまめに電気を消し、夏のエアコンは28度以下で我慢するみたいなイメージだと思う。たしかに正しいし実際にシンキロウの会社でも実施している。だけど単に電気使用量を減らすためだけじゃないんだ

 

エネルギー管理の大切な仕事にエネルギー使用の平準化がある。どういうことかというと年間を通して電気を使う量を一定にすることなんだ。真夏の昼間は冷房で電気使用量が一気に上がる。会社だと装置の冷却にすごくエネルギーを使うんだ。それを減らす工夫をしないといけない。そのために製造時間を夜間に移したりしないといけない

 

でもね、それでも夏や冬は使用量が大きいんだ。そうすると春秋の電気使用量を逆に増やさないといけないよね…?実際にはそんなことはしないけど大きなジレンマなんだ

 

毎年エネルギー効率を上げなければならない

法律でエネルギー原単位、生産した製品の量当たりの使用したエネルギーを毎年1%減らさないといけないんだ。これは本当に難しい。多くの企業が二酸化炭素の排出権取り引きをしたい理由はこれ。発展途上国と違って日本の産業はかなり効率化されているのでこれ以上の省エネは大変なんだ

 

だからといって無視するわけにはいかない。効率化が進んでいないと経産省から指導されるし、税制優遇措置なども受けられなくなるし。なによりも二酸化炭素の排出を抑えることは環境保護の観点から不可欠だからね

 

他にもあるけどまた次の機会に書こうと思う

 

以上の業務はエネルギー管理者(員)、エネルギー管理企画推進者そしてエネルギー管理統括者が行うことになっている。前者二つにはエネルギー管理士の資格がいる

 

エネルギー管理士

経済産業大臣が発行する国家資格。一般財団法人省エネルギーセンターが毎年一回主催している試験に合格するか講習会を修了すればもらえる。熱分野と電気分野に別れていて自分が得意な方で受験すればいい。シンキロウは化学者だから熱分野で受験したんだ。8月に受験して1ヶ月後に合格通知が届いてそこから免状を申請して4ヶ月後に届いた。その免状がこれ↓

 

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免状をもらうには一年以上のエネルギー合理化の実務経験が必要。でもこれは合格前でも後でもいいとされている

 

試験分野は熱・電気ともに4科目。熱分野の試験科目は

I. エネルギー総合管理及び法規

II. 熱と流体の流れの基礎
III. 燃料と燃焼
IV. 熱利用設備及びその管理

試験はまる1日がかりになるね。科目が多いんだけど合格した科目は向こう3年間有効なので次に受けるときは免除される

 

受験勉強は省エネルギーセンターが開講しているweb講座を聴講した。一週間通いのセミナーもあったけどシンキロウ仕事あるしね。ホチキス綴のテキストが送られてきて毎晩勉強した。あとは市販の問題集を使った

 

 

試験内容だけど高校化学が思い出せればとても助けになる。出題形式は穴埋めマークシートで法規は出題される語句がほぼ同じなので何年分か過去問題を解けば傾向は見える

 

とくに潰しのきく資格ってわけじゃないけどシンキロウの勤めている会社では資格手当が結構もらえるので家計にありがたいかな